EurekAlert! News Release 22-Nov-2025

Scientists unveil mechanism behind greener ammonia production

—Cutting-edge X-ray techniques reveal how copper oxide catalyzes electrochemical reaction—

https://www.eurekalert.org/news-releases/1106626

酸化銅触媒によるアンモニア合成に関する論文の紹介記事がEurekAlert!に掲載されました。オペランドX線吸収分光の研究です。
Scientists unveil mechanism behind greener ammonia production | EurekAlert!

ぜひご覧ください!

【解説】

 電気化学的なアンモニア(NH3)合成は、従来の高温高圧を必要とするハーバー・ボッシュ法に代わる、持続可能でカーボンニュートラルなアンモニア製造方法として注目されています。本研究では、銅(I)酸化物(Cu2O)微結晶を用いて、硝酸イオン(NO3)をアンモニアに変換する電気化学反応(NO3 + 6H2O + 8e → NH3 + 9OH)の過程で、触媒がどのように変化するかを、電位および時間の変化に応じてリアルタイムに観察しました。これには、反応中の触媒の状態を直接測定できる「オペランドX線吸収分光(operando XAS)」という先進的な分析手法を用いています。

 

 Cu₂O微結晶をカーボンファイバー基材上に担持し、+0.6 Vから−0.7 V(RHE基準)の範囲で電位を変化させながら、硝酸イオンの有無による銅種の化学状態および構造変化を追跡しました。その結果、硝酸が存在下する場合には、1) Cu2Oから金属銅(Cu0)への還元が遅れ、副生成物として亜硝酸イオン(NO2)が主に生成すること、2) 還元電位をより負にすると、微細なCu0粒子が生成し、NH3生成の電流効率(Faradaic効率)が大きく向上することが明らかになりました。

 

 これらの結果から、反応中に形成される微細な金属銅粒子が、NO2の水素化反応を促進し、アンモニアを生成する実際の活性種であることが示されました。銅系触媒は電解反応中に酸化還元状態や構造が変化するため、真の触媒活性種を特定するのが難しいとされていますが、本研究はオペランドXAS測定を用いることでその実態を明確に捉えました。

 

 本成果は、触媒表面への硝酸イオンの吸着吸着挙動や中間体の水素化反応と金属銅生成の役割について理解を深め、常温常圧での環境負荷の少ないアンモニア製造技術および高性能な電極触媒の開発に向けた新たな指針を与えるものです。

R. M. Surya, S. P. Singh, K. Beppu, F. Amano*

"Potential- and Time-Dependent Operando X-Ray Absorption Study of Cu2O Microcrystals Transformations during Nitrate Reduction to Ammonia"

ChemSusChem, 18(23), e202501785, 2025
https://doi.org/10.1002/cssc.202501785

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